程よい疲労感と、倦怠感。
夢と現の間をゆっくりと行き来する、茫洋とした時間。

顔の半分を枕に沈めるようにして、このぬるま湯のような空気を味わう。

自分が、男をこの身に受け入れることになるなんて、あの日々には考えもできなかった。
ただただ毎日を我武者羅に生きてた、そんな感じだった。

あれから、沢山沢山悩んで、いっぱいいっぱい苦しんで、色んなことを乗り越えた。

もう、随分と昔のことに思えるけれど・・・。

けど今は、落ち着いている。
概ね幸せ。

そう・・・、幸せだ。


そうして、僕の意識は、徐々に深く、落ちるように、昇るように、広がるように、温かな世界へと・・・


ん・・・ん・・・?

−−−あぁ・・・、そっか。
またか・・・。


背中に触れる、温かいような、くすぐったいような感覚。

それでも僕は覚醒しきれない。


「とぉ・・・ま・・・」


上手く回らない唇を動かし、相方の名を呼ぶ。


そういえば、以前彼はこう言っていた。

お前の背を見たら口付けずにはいられない、と。

何故と問えば、

「法王の指輪や聖人像の足にキスするのと似た気持ち、かな」

と言った。

そんな偉いもんじゃない、と返したら、俺には同じさ、だって。

まったく呆れる。

そうして僕はさらに思い出す。

昔、彼が必死にアプローチして、猛烈にアタックしてきたことを。

最初は驚き、次に困惑した。
怒ってもみた。

なのに、いつの間にやら嬉しくなってて・・・、傍にいないと寂しくなったりして、また驚いた。


「ふふっ」
「・・・?くすぐったいか?」
「いいや、思い出し笑い」
「へぇ・・・、えっちだな」
「そうだよ」


肩甲骨あたりを彷徨っていた唇がふいに離れた。

彼のビックリ顔が瞼に浮かび、また可笑しくなる。


さぁて・・・、これからどうしようかな。

再び朦朧の世界へ戻るか、それとも、後ろを振り返り、愛しき間抜け面を拝もうか。



END

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