知り合ってから、早いもので10年以上が経過した。
他人に言うと驚かれるのだが、その間、俺の気持ちはまったくブレることなく、
ここまできた。
そりゃ、人並みにムカつくこともある。
だが、いまだに相方をみるとドキドキしたり、ウキウキしたり、キュンキュンして、
切ない気持ちになる。
秀に言わせれば、「天才って、脳みそだけじゃなくて感情もパンピーとは違うんだな」
だ、そうだ。
俺からしてみれば、あいつを目にしてクラクラしないなんて、そのほうが不思議で
不可解だ。
あんっなに、美人で、せくすぃ〜なのに!
見ろよ、あのちょっと愁いを帯びた煌く瞳、柔らかな髪そして覗く白いうなじ、
滑らか且つ艶やかな肌、薄紅色の頬と唇、すらりとした姿態、流れ誘うような
あの所作を!
悶えずにはいられないだろう、普通!
他の奴等の目が節穴だとしか思えない。
だが、節穴でいてくれて有り難かったともいえる。
ライバルは少ないほうがいいからな。
いや、でも、みんな内心、本当のところはどうなのか、わからない。
だから俺はいつでもやきもきしている。
社会人となった恋人が、毎朝出勤する度に、心配で心配で胸が押し
つぶされそうになる。
口では、いってらっしゃい、と言いながら、実はその腕を掴んで
引き戻して、腕の中に閉じ込めて、あわよくば食べてしまいたいと
思っているのだ。
なもんで、たまに実際やらかして、しこたま怒られたりもする・・・。
だが、それすら俺には幸せで。
さすがに、俺ってどうしようもないな、と、反省しないこともないのだが・・・。
この気持ちはずっと変わらない。
「救いようがねぇ、っつーか、めでたい奴、つーか・・・。まぁ、お前らが
いいんならいんだけどよ」
先の友人は、そう言って笑い、俺の恋人は「ちっともよくないんだけどね!」
とムクれていた。
ああ・・・その顔も、超絶かわいい!
ほんと、俺という、しょうもない人間に、よくぞこんなできた、エロカワな
恋人をあてがってくれた!
世の中、実に上手く出来ているもんだ、と、つくづく思う。
神の采配に乾杯!
俺は伸という奴に出会わなければ、きっとこういう気持ちを知らないまま
生を終えていたのではなかろうか。
で、こうしてみると、俺ばかりが一方的に、彼に恋焦がれていて、彼は迷惑
がっているようにしか思えないかもしれないが、残念ながらそんなことはない!
俺の恋人は、究極のド天邪鬼なのだ。
本当は、俺にこんなに想われて嬉しくて仕方ないのに、そうじゃない素振りで、
必死に繕おうとしている。
しかし、そんなの俺はお見通し。
伊達に惚れ抜いているわけじゃない。
言っておくが、これは俺の思い込みや妄想でもない。
その証拠に、これまで別れを切り出されたこともないし、家出をされたこともない。
プチ家出はあるが・・・。
とにかく!
人の恋心を、女心や秋の空なんていうけれど、その例え、俺にはまったく当て
はまらない。
今も目の前で、半口開けてすやすやと眠る彼を見て、俺は極上の幸せに浸って
いるのだから。
END
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