「そういやぁさぁ、おめぇら同居して何年よ?」
秀が遊びに来た。
ちょっと久しぶり。
あのメンバーとも、社会人になってからはなかなか会えない。
一人を除いては。
「んん?あー、えーと、8年・・・目、だったか?」
考えなくてもきっちり数えてるくせに。
「そーだね、そんなもんかな?」
「ひえーっ、それって、長くね?」
「そうかぁ?」
何をしれ〜っと・・・。
でも、僕は何も言わない。
で、おかわりのお茶を注いだりなんかして。
「当麻、おめぇも、もういい年なんだからよ、自立して、結婚とか考えねーの?伸だって、なぁ?困んだろが」
うーん・・・、『結婚』、ねぇ・・・。
そう思いつつチラと横を窺うと・・・。
『あのなっ、言わせてもらうが、そもそも、この伸との生活は、『同居』じゃない!『同棲』だ!俺たちゃぁもう結婚してるも同然なんだよっ!』
という、心の声がダダ漏れだった・・・。
まぁね、そう。確かにそう。当麻の(心の)言うとおり。
始まりはただの同居だったけれど、僕はまんまと当麻にハマった。
それはもうドップリと。
一線を越えるのも、さほど時間はかからず。
だって、泥酔したてたから。
を、理由にして。(あいつは、ほんとはそんなに酔ってなかったに違いないし、実は僕も酒には強い。)
その後は、結構なし崩し的に。
『付き合おう』って言われたことも、言ったこともないままに、ここまで来てしまった。
あっという間だった。それなりに幸せで。
実家に帰るつもりは、はなからなかったから、僕自身には何の問題もない、のだけれど・・・。
それでも当麻は、彼なりに色々気を遣ってくれている。
今だって、心の叫びを必死に堪えて、笑って誤魔化してるし。
彼の心の声が聞こえるまでになっちゃったし。
うん。
そうだ。
だから、そろそろ、いいかもしれないな。
「あのさ、秀」
END
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