5月の連休、外は快晴。
柳生邸。燦燦と陽光の降り注ぐ広いリビング。
そこにあるソファからは、力なく垂れた白い腕。
淡い桃色のふっくりとした唇。
長いまつげ。
色素の薄い柔らかな髪。
今日も気になる本を蔵から持ち出し、ここに来た。
いつも“ある特定の人物”のシェスタの場所はずの柔らかなクッションの上。
が、既に占拠されている!
しかも、超〜意外な人物に。
なんで俺やない奴がここにおんねん!
眉間に縦皺で、考えた。
(さて、どないしたろ・・・)
★・★・★
ん〜・・・・・ん?曇ってきたのかな??急に暗くなった。
あぁ、洗濯物とりこまなきゃ。
んんん??なんか唇が生温かくね?あ、湿っぽ。白炎かな??
いやいや、白炎はもういないんじゃなかったっけか?
じゃ、こりゃ何だ??
ぱちり。
「なにぃーーーーーーーーーー!?!?!?!?!?!?」
「うえぁおわ!!!!」
「わぁ!わぁ!わぁ!わぁ!わぁ!わぁ!」
「なんだなんだなんだなんだなんだなんだ」
「――――――――――――――――」
「――――――――――――――――」
二人とも見合ったまま変な汗ダラダラ。変な空気流れまくり。
そして・・・
「お・お・おま・おま・おまま!」ふう・・・「お前―っ!!何すんだコノヤローっっ!!!」
伸は当麻の胸倉を掴み、力の限りわっしわっしと揺さぶった。
それに対し・・・
「あがっ!が・・・っ、ちょっ、げっうぐっっ」げふっ「待て―っ!!待てよっっ!!!」
当麻も伸の袖を掴み、引き剥がそうと必死。
そこに突然の叫び声に驚いた他の3人が現れ。
「どうした!何があったんだ!?まさか妖邪か!」
「何やってんだよ、おめーら!」
「こらっやめんか!二人とも!!」
「「だって、コイツが!!!」」
なかなかによくハモった。
10分後。外はまだ快晴。五月晴れってやつ。
「で、自分の(だと思い込んでるのってオカシクないか)場所を乗っ取られて、」
「で、ムカついて(ってそこもやっぱオカシイだろ)仕返しをしてやろうと、」
「で、接吻をしてやったと(その挙動もオカシイではないか)そういうことか。」
「「「当麻、お前がオカシイ!!!」」」ビシっ。
こちらもみごとなハモリ。
「だろ??だよね??ひどいよね!あんまりだ!当麻てめぇこのぉ〜〜〜〜!!」
「「「わぁ!待て待て待て伸!!」」」
素晴しいユニゾン?
「で、でもっ、暴力振るわれたわけじゃないし!(犯罪手前な気はするけど)」
「ちょ、ちょびーっと触れただけだろ??(それでも野郎相手ってのは何だけど)」
「ま、まぁ、魔が差したというやつではないか?(それでも接吻というのはやはり問題だが)」
「やろ?そやろ??たいしたことやないやん!せやのに伸、てめ、なんやねんな!!」
「「「わぁ!やめろやめろやめろ当麻!!」」」
さすがのチームワーク。
さらに10分後。まだ日は高い。外では鳥の囀り。ピチュンピチュン♪
柳生邸リビングは季節外れに冬将軍到来。ブリザード警報。
「なぁ、ここはやppり当麻が謝ったほうがいんじゃないか?」
「おう、そうだぜ。ソファ盗られた(??)からって、キスすんなぁやっぱあれた、なぁ。」
「うむ、その通りだ。ヤられた伸の身にもなってみろ。」
「“ヤられた”とか言うな。」ギロ
普段穏やかな人物に凄まれ、さすがの征士も身が竦んだ。
失言注意報発令。
「いややっ」プイ スタスタスタ バタン!
「「「「え゛え゛〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!?!?!?!?」」」」(←4人分)
直後。外の音は聞こえない。
真っ白になった伸に対し。
先ず遼が、
「しっ、伸はほら、どうせファーストキスじゃないんだろ?」(思ったことを口にして)
ギっ! ピキーン で、一人目。
そして秀が、
「なんだまぁ、こうなっちまったもんは仕方ねぇだろ?」(場を和ませようとしたつもりが)
ギギっ! ピキーン で、二人目。
最後に征二が、
「これは・・・そうだ!天才からの天災だと思ってだな・・・」(征二なりに懸命だったけど)
ギギギっ! ピキーン で、三人目。
スタスタスタ バタン!
災難は、誰にも突然やってくる。
3分後。チーン♪
「「「っ!はぁ〜。。。。。」」」
「確かにな・・・(伸は可愛いと思う!)」ぐっ
「そりゃぁな・・・(当麻おめえひでぇよ・・・)」げんなり
「んーむ・・・(最初から接吻というのがいかんのだ。)」うんうん
やはり人はそれぞれ。
はっ「あ!!っていうか・・・!(今晩の)」
ぎょっ「そうだぜ!(夕飯!)」
ぬぬぬっ「まいったな・・・(もし伸が機嫌を直さねば・・・)」
「「「はぁ〜。。。。。」」」
やっぱり息はピッタリ?
そんなこんなで午後7時。
結局その日の夕食は白いごはんに豆腐味噌汁おかず無し。で、以上、解散。
当の二人はどこへやら、姿も見せず、5月の夜は更けていく。
コンコンコン。書斎の扉を叩く音。
返事はもちろんない。
でもこの部屋に鍵はないから。キっ パタン
そっと近づく影ひとつ。手にはお盆、その上には湯気を立ててるカップが二つ。
椅子に座って背を向けたままのやつに、
むすっとしたまま「夕飯食べなかったんだって?ごめん。悪かった。僕に非はないと思ってるけど。」
ぽりぽりと頭を掻きつつ「いや・・・俺も、すまんかった。やっぱ俺がオカシかったわ。」
「当然」
「ああ」
「よし、許す。」
「でも、俺のトレーナー、首んとこビロビロやぞ」
「だから、ごめん」
「ま、許したる」くるり
「ココア、飲む?」ニコ
「おぅ、さんきゅ」
氷河期はあっさり過ぎ去った。
「当麻ってさ、オカシイオカシイと思ってたけど、やっと自覚した?」
「いやぁ、俺もオカシイオカシイとは思っててん」
「はぁ?」
「んで、さっきようやっとわかったんや」
「さっき?何が?」
「なんでお前にキスしたったか」
「はぁ・・・」
「俺、お前のこと好きやねん」
「・・・・・・・・・はあ!?!?!?!?!?!?」
「ほんなわけやから、もっかいキスしてええ?」ニコニコ〜
星空の下、柳生邸。外の森ではフクロウの声。ホォウホォウ♪
を、かき消す凄まじい破壊音。
夜も連休もまだ続く・・・
END
―――にはならず。
数年後。
ある意味被害者だった遼・秀・征士3人のもとそれぞれに一枚の葉書が。
『私たち、羽柴当麻と、毛利伸は、この度共に暮らすこととなりました。』
『これからもご指導ご鞭撻のほど、宜しくお願い申し上げます。』
とな。
住む町はまちまちなれど、
「「「え゛え゛〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!?!?!?!?」」」(←3人分)
だよね。
おしまい。 |