おみあし

   ほんま、おもろい寝方やな・・・。
   当麻は同棲・・・もとい、同居人の寝姿をしみじみと眺め、改めてそう思った。
   夜更かしのこの男が、さて寝ようかな・・・と思ったのは、明け方とも深夜ともつかない
   午前時半。

   当然、同居人は爆睡・ノンレム睡眠中である。
   そして、その同居人、伸の寝方には特徴があった。
   毛布に包まる。これは普通。しかし、伸は頭までつっぽり被る。
   てっぺんだけ残して。
   毛布の上部は薄茶の髪の毛がほよよんと見え隠れしていて、まぁ、かわいらしい。
   と、言えなくもない。

   問題(?)は、下の方である。
   こんだけ上は隠れているのに、何故か、足は出ているのだ。膝から下が。
   (頭隠して尻隠さず?)当麻の頭には、見るたびにこの言葉が浮かぶ。
   さすがに冬は全身埋もれている(でも頭のてっぺんだけは出てる)し、
   夏は肌蹴てることも多いが、
   それ以外は、大よそこんな感じだ。

   フライドチキン(もも肉)の、肉の突先から、毛が生えてるみたいな。
   全体図的に、“おもろい寝方”なのである。
   が、この布団からはみ出している“おみあし”。
   これが、何とも悩ましいので、当麻はいつも困る。
   パジャマの裾も捲れて覗くそれは、男の癖に無駄毛がなく、つるりとした白い肌で
   ほどよく締まっていて。(もちろんその触り心地は熟知している。)

   尚且つ横向きに包まっているから、上下の足が微妙にずれていて、その配置が、
   これまたなんとも艶っぽいときたもんだ。(あくまで当麻目線。)

   それがモソモソ動こうものなら、そらもう鼻血ブーもの。(これもあくまで当麻目線。)
   相手は完全に夢の中にいるわけだから、決して誘っているわけではない。
   そんなことは重々わかっているのだが、当麻はこの光景を目にするたび
   (ということはほぼ毎日)、この魅惑的な“おみあし”に悩殺されるのである。

   (俺って足フェチだったけか?)自問自答することも度々。
   それでも大概は、見て見ないふりをしてみたり、自制心を持って耐えてみたり、
   色々我慢の方法を駆使するのだが、たまーに、どうにもこうにも抑えられなくて、
   触れて (というより撫でて、たまに舐め・・・(略)) しまうことがある。

   ところが、この“おみあし”、なかなかに凶暴なのだ。持ち主の意思とは全く関係なく動く。
   触れた瞬間、顔面に踵落としや回し蹴り(え!?)が飛んできて流血したのも
   2度3度のことではない。

   その度に(これは何かの罠か!?)と思う当麻。
   朝起きて、同居人の顔が別人になっていて驚く伸。
   そして今夜・・・今朝もまた、その“おみあし様”に、吸い寄せられるように目がいってしまい、
   ひとり悶々とする当麻であった。


   おわり(短っ)
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