ヘンだ。


なーんかが・・・

ヘンだ!


その原因を探るべく、俺は改めて、この家の中をぐるりと見回した。

しかしながら、まったくもって、いつもの光景。

うーーーん・・・・・・
なんら変わらない。
つーか、代わり映えしねーし。

いつものメンバーに、いつものやり取り。
遼と当麻がケンカして、伸が当麻を叱り、俺が茶々をいれ、征士が諌める。

んんん〜・・・
なんも変わんねー・・・よな?

と、

ふと、

視線の端っこに引っかかるものがあった。

キラっ

ん?

キラキラっ

んんん?
な、なんだっ?

俺は、目を擦った。

見間違い?・・・・・・じゃ、あ、ねぇ・・・よ、な??

首を前に伸ばして、目を眇めてみた。


「おい、秀、なぁに、人のこと、ジロジロ見てんだよっ、キモイ」

・・・・・・だよな・・・・・・

間違いない、いつものヤツだ。
高飛車な態度も、口調も、いつも通りだ。

なのに・・・
なのに、何かが、違う。
違う、と、俺の直感が、そう言っているのだ。

キラ・・・キラ・・・、してる・・・よ、なぁ?

でも、

ナンデダ???

俺は首を傾げた。

「難しい顔しちゃってサ。あ!・・・もっ、もしかして、食あたり?!」

うーん・・・
基本はなんも違わねーのになぁ・・・
どういうわけなんだ???

「伸、何、寝ぼけたこと言ってんだ。秀が“食あたり”になるわけがないだろう」
「あ、そうか。そうだよねぇ」

いやいや、『あ、そうか』じゃねーよっっ
俺だってなあ、さすがに緑色の卵・・・!

・・・て、アレ?アレレ?
俺、何考えてたんだっけ??

「でもほら、やっぱヘンじゃないか?コレ」
「んーむ、確かに・・・」

あ、そーだ!
思い出したゼっ!

「なあ伸っ、おめぇよ、」
「わあっ!なんだよ急にっ!な、何?」

「おめぇ、なんか、あったか?」
「はあ?」

「なんか、あったのか?」
「な、なんか、って・・・」

ん?
ちょっと、顔色変わったか?

「あったのか?」
「え、秀・・・、言ってる意味、ぜんっぜん、わかんないんだけど?」

「あったんだな!あるんだなっ!」
「や、おいっ、ちょっ、ちょっ、秀、近っ!」
「うーむ、確かに、こいつ、オカシイな」

「ぅおあででででっっ、おいッ、当麻っ、い゛い゛い゛ってぇってのっ!」
「伸、こいつは、俺に任せろ。秀、その話は、この俺が聞いてやろう」
「え、あ、そお?じゃあ、ヨロシク」

「はあっ?!なんでここに、おめぇが出てくんだよっっ」
「秀、俺は、誰だ?」

「ああんっ??」
「そう、俺は、智将だ。しかも、天才だ。俺に解決できないことはない」

「え、そ、そう、なのか?」

「・・・・・・・・・じゃ、後は、よろしくぅ〜・・・」


というわけで、俺と当麻は、居間から書斎へ移動した。


「で?」
「あ?」

「で、何を訊きたい?」
「え、何を?って、えー・・・、あー・・・、なんだっけ??・・・ああ!そうだっ」

「ふん・・・。で、何だ?」
「人がよぉ、キラキラして見えるってのは・・・、俺の目が変なのか?それともキラキラしてる奴に何かあるのもんなのか?」

「ふぅーむ・・・なるほどなるほど、そういう話か・・・」

当麻は、腕を組んで考えた。
俺は待った。



「コイだな」

「は??コイ???」
「そう、コイだ」

「えーーー・・・はい???」
「『コイ』とは、人を美しくするものだ。お前も聞いたことがあるだろう」

「あー・・・、まー・・・、そう、だ、な・・・」
「そういうことだ。以上。これが答えだ。わかったな?じゃ、俺は調べものがある。また夕飯時に会おう」

そう言って、入ったばかりの書斎から押し出された。



えー・・・・・・

コ、
コイ?

『コイ』って・・・・・・・・・

アレ、だよな?


“恋”


だよ、な?
腹は膨れねぇが、胸はいっぱいになる、ってぇ、アレ、だよ、な??

え?
それはぁー・・・・・・、ナンダ?
ドユコト??

俺が、“誰か”に『コイ』してる、ってことなのか?

こここ、ことなのかっ!?

で、
その、
誰かってのは・・・、それは・・・、

キラキラして見えたのは、俺が、伸を、見た時だから・・・・・・

でぇえええええええええっっっ?!?!?!
まままままマサカーーーーーっっ!!!
ま・さ・か、あああああああいつ・・・、かっ!?


俺→伸


・・・・・・・・・・・・つこと?


ねぇっ!
ねぇっねぇっねぇっねぇっねぇっねぇっねぇっねぇっねぇっ
それはねえゾっっ!
ぜッッッッッッッッてぇ、あり得ねえっ!!

だって、あいつ見ても、なあーーーんも、感じねえもんっっ
キュンでもなけりゃ、グっ、でもねぇ。
腹が減った時に、グーと鳴る程度だ。
食い過ぎで酸っぱいもんが混み上がってくることはあっても、甘酸っぱい感じなんか、これっっっぽちもねぇし!


・・・・・・・・・え

てことは、
じゃあ、
何か?
俺が、
じゃなくって、

あいつが、

なのか??


伸→誰か


って、
ことなのかっっ?!

え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛っっ!?!?

あの
アノ
ANO

“伸”

が、かっ!?

ぉえええええええっっっ

・・・じゃなくて、

え、
て、
じゃ
じゃあ・・・

だっ、
だっ、
誰だっ?

誰なんだっ!


『アノ』

伸が、

いったい

誰に、

『コイ』

してるってんだっっ?


だって、
だってよ、
この家、

今、住んでるのって・・・・・・・・・


ぉわぁあああ・・・・・・

・・・・・・・・・訊けねぇー・・・・・・

これは、

恐くて、

ぜってぇ、
訊けねぇー・・・・・・

つか、想像すんのも、こえぇえええ〜〜〜〜〜っっ・・・・・・


そんなわけで俺は、これ以上、そのことについて思考するのを放棄した。



そして・・・



それから十数年後


この記憶の奥底に封じ込めた謎の答えは、ある日突然、明かされたのであった。



END


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