姿を見かけるだけで、心臓がバクバクいうのは、身体が拒否反応を示しているからで。

見つめられると頬が火照るのは、怒りを感じているからで。

会話をしているうちに、頭の中がグチャグチャになるのは、とにかく、そいつのことが嫌いだからだ。

な?

そうだろう?
そうじゃないか?
そういうことだろう?


言うと、秀は、俺の右肩に、そのゴッツイ手を乗っけて、ひとつ大きく頷い・・・た
りはせずに、ゆっくりと首を振り、

そして言った。


「当麻、俺ぁ、祈ってるぜ。おめえが早く大人になるように、ってよ・・・」


くるりと背を向け、俺を残し、秀は去った。


・・・かのように見えたが、急に立ち止まると、


「あー・・・、いや、やっぱいいや。おめえは、そのままでいい。うん、そうだ、それがいいそれがいい、うんうんうん」


大きく頷きつつ、今度こそ、リビングからいなくなった。



他の面々が買い物に出かけた、ある晴れた秋の日の午後だった。



END


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