普通じゃない。


そう言われる機会は、圧倒的に俺のほうが多い。
若いころは、抵抗したが、今は十分に理解している。
確かに俺は、大多数の人と比べれば、様々な能力について抜きんでているし、
欠落している部分もある。

だが、言わせてもらえば、ある状況においては、そうではない!
と、声を大にしたい。

この場合において、普通ではないのは、俺よりもむしろ、相方のほうである、と!

普通、

そう、普通は・・・、という、この状況であるが、それは・・・・・・・・・


朝チュン


前の晩に、あんっまぁ〜〜〜〜〜い時間を共に過ごした、翌朝のことだ。

普通は、ちょっと気だるい身体をもぞつかせて、同じベッドの中で目が覚めて、
で、いきなり目が合っちゃったりして、照れ笑いなんか浮かべちゃって、でもって
『おはよ・・・』とか、掠れた声で朝の挨拶を交わしたりなんかする。

それが、いわゆる、ごくごく普通の恋人同士における“朝チュン”なのだと、
これまで俺は理解していた。

ここんところは、ちゃんと勉強もしたし、確信がある。

しかも、そのシチュが、X'masだったり、誕生日だったりしたなら、その甘々度の
高さは推して図るべし、だ。

いや、よしんばベッドの中での朝チュンでなくても、だ。
あーんなことや、こーんなことして、心も体もドロンドロンに融けあった次の日は、
彼がキッチンに立っている姿を眺めてるだけでも、俺の顔は緩みっぱなしだ。
締めろ、と言われても無理。
表情とか、声とか、感触とかが甦ってきて、下手をしたら、ムスコがスタンバって
しまうくらいに、無理。


なのに、だ!
しかし、だ!

俺の愛しい人は、違う!

そんなことは、いっっっっっさい、ない!

そもそも同じベッドで目覚めることがほとんどない。
大概、終わったらシャワーを浴びて、自分の部屋に戻ってしまう。
稀に、疲れてそのまま寝てしまったとしても、俺より後に起きることは、まずもってない。
俺が目覚めた時には、隣は既に冷たい空間になっている。


それでも・・・っ、それでも、だ!

100歩譲って、それでもいい!

が、せめて、そういう晩の翌朝は、顔を合わせたら、微笑みかけてほしい。
いや、正直、照れ笑いを浮かべて欲しいっ!!

はにかんで欲しいっっ!

そう思うのは、至って“普通”のことだろう?!
ちっとも、“変わってる”ことでもなければ、“おかしな”ことでもないはずだ!

なのに・・・

なのに・・・っ


非常に残念なことに、俺の選んだ、俺の恋人ちゃんは違う。


・・・・・・・・・めっちゃ、コワイんですけど・・・。


挨拶は、ぼそっと『はよ』程度。
投げかけられる視線は、視線というより、ガン飛ばし。いや、完無視に近い。
朝食時の会話もほぼなし。

最初の頃は、俺の夜テクが酷過ぎてご立腹なのかとショックだったが、どうやら
そうではないらしいことは確認した。
彼は俺との営みに、ちゃんと満足してくれているのだ。

にも拘わらず、何ゆえ、そんなVery CoolでVeryVery Coldな態度をとるのか。



それが、彼なりの、照れ隠しであることに気付き、理解し、消化するまで、俺は
相当の年月を要した。

そのうえ、彼がその照れ隠しをやめるに至るまでには、更なる月日を要したことは
言うまでもない。



が・・・・・・・・・・・・



今は、めっっっっっちゃ幸せ最高に大満足な俺ちゃんでしたvvv





END

屋根裏部屋の入り口へモドル
文章部屋の目次へモドル
リビングへモドル
ニッキへモドル