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真夜中の踏切事故

■1965年11月17日(水)
17日と言っても夜中で、実際には18日の午前零時5分頃である。2運行284列車に乗務中、本日も終点まで行って折り返して終わりという頃のできごと。
H駅1号踏切直前で突然の急制動。 その瞬間自分の手はマイクに走り、スイッチを入れて社内通告をしていた。
「急ブレーキがかかりますからご注意下さい」と車内放送しながら、たまにはあることだ、何もなければいいがな んて思っていたところ、放送が終わるか終わらないかの頃、車内にちょっとしたショック。
あっ、これは接触事故だなとすぐ感じたのであるが、続いてガクンときた。 その後すごい大音響と共に大きくスパーク、何かが爆発し たようだ。自分は車内監視していたのであるが、先頭車がすごく左右に揺れ、脱線したのではないかと思 った。

これはひどいことになった、大きな事故のようだなと考え、とにかくもう一度車内放送をして、お客様を 落ち着かせようと思い、「只今、踏切にて接触事故のようですからこのままで少々お待ち下さい」と話し始めたと ころ、半分も話さないうちに室内灯が消えた。
これはますますひどいことになったと思いながらも、脱線していれば対向線路を支障しているかもしれない、下り列車がすぐくるので、列車防護に行かなければならないと、片手はカバンから信号炎管を取り出している。同時に予備灯にもスイッチを入れたが点灯しない。
信号炎管をカバンから取り出し、手に持つか持たない頃、衝突の音を聞いて事故を知ったのであろうか、駅員が早くも目の前を対向線路、列車のくる方向に向かって防護に行くのが見えた。実際これで大分落ち着いた。よしこれで一段落だ。

対向線路の列車防護に行ってくれれば一安心。後続は今の時間10分以上あるんだ。
自分に落ち着け落ち着けと言い聞かせながら、次にやることを考えていた。事故が起こっていることは確かである。室内灯も消えている車内のお客様は大分動揺しているだろう、お客様に落ち着いてもらうよう、車内に入って3両に聞こえるように、思いっきり大きな声で、「室内灯は消えて不安でしょうが、電車の周りに何があるか分からないので勝手にドアを開けて外にでないで下さい。少々待って下さい」とどなった。
すぐ引き返し、山側の開き戸を開けて降りる。すぐさま目に映ったのが、人間。自動車と衝突したようであるが、とにかくめちゃくちゃになった自動車が電車のすぐ後ろにあり、その中に一人人間が挟まれて上を向き血だらけになってぐったりしている。それ大変とばかり救急車の手配に行く。
幸いH駅は駅長所在駅で公衆電話も入っているはずだと駅長室に駆け込む。駅員が乗務区に連絡してくれたので、自分は110番で警察と救急車の手配をする。すぐ現場に引き返す、この間2分位だろうか。

もうこの頃は道路、線路際とも野次馬で一杯。野次馬にも手伝ってもらい、駆けつけた警官と一緒に自動車から傷ついた人を引っぱり出す。自動車がめちゃくちゃで、はさまれて思うようにならない。みんなで力を合わせて広げ、やっとのことで見えていた人を 出す。中を見ると、中にまだ人がいる。
一人では無いぞと思いながら、ともかく出した人を道路の平ら なところに運び、ちょうど駆けつけた救急隊員に引き渡す。すぐ次の人にかかる。まだ中に2人いるようだ。この頃消防隊員もおまわりさんも大勢駆けつけ手伝ってくれたが、まだ前の車輪に巻き込まれている人がいると運転士さんの声が聞こえる。
すごい事故になったが、車内のお客様も出さなければとあせったが、12時30分頃になってしまった。この間2回くらい車内に入ってもう少し待ってほしいと説明したため、お客様は特に騒ぎもせず待ってくれたのが救いであった。

先頭の電車に巻き込まれた人は、助け出すのに時間がかかり3時過ぎまでかかった。でも、この方も助からなかった。最後まで何人いたのか分からなかったような状況であったが、4人死亡1人重傷の大事故であった。