ある晩夏の連休の朝、これと言って予定なし。
友人に電話する。…出ない。…メールする。
友人も予定なし。
「ドライブにでも行こうか」と言って落ち合い、本屋へ。
目的地を探すために雑誌をペラペラと捲っていたら、
目に飛び込んできた「松本城」と「飛騨高山」の写真。
「久々に行ってみるか」と言うことで、いざ長野方面へ。
「深い自然と歴史に触れる」という目的を無理やり作り、
中央高速を飛ばす。
昼過ぎに横浜を出発したため、松本に着くと既に陽が傾き始めていた。
それにしても、松本城、格好良い。
黒塗り。スマートなフォルム。逆光でも格好良い。
日本の城の中で最も格好良いデザインである。
黒塗りの城の中には、黒塗りの鎧。
ちょい悪の、ちょい怖である。
鎧を見ると、いつも武者震いしてしまう。
僕にも武士の血が流れている事の証だろうか…。
写真はないが、天守閣からの眺めが最高。
南アルプスが丸見えである。
因みに、以前旅番組のロケで訪れた、松本城の目の前にある
市役所の屋上から見た松本城ナメの一月の南アルプスの雄大さは忘れられない。
天守閣を下りて、城内をブラブラ。
どの角度から見ても男前の城だ。
この角度もいい。
コイツには死角がないのか?
一日目は、陽が落ちて松本から移動し、上高地付近の温泉宿に宿泊。
軽いドライブのつもりが、気が付くと旅となっていた。
二日目は朝から上高地へ。こんなに雄大な自然を感じられたのは久々。
月並みだが、空気が本当に美味い、都内に住んでいるので心からそう感じた。
上高地の清流。
橋の上からでも、魚が見えるほど澄んでいる。
持ち込み可能ならば、カヌーで清流下りといきたいものだ。
ノープランだった割に、久々のハイキング。
尾瀬のような風景、どこか懐かしい雰囲気に足も弾む。
将来は作家になって、こんな所に移り住みたい…と友人。
この辺に家を買って、作品を書いてメールで送る創作活動。
たまに都内で関係者とあってさ…云々。
隣の友人、漠然と慎ましい作家生活の妄想に励む。
妄想よりも足を動かせ…と友人を振り返りながら思った。
こんな長閑な場所に住んだら、時代に取り残される…と思いつつも、
やはり田舎の生活には憧れなくもない。
しかし、その前に僕にはやらなきゃならん事が山ほどあるだろう。
二日目の夕方、飛騨高山に入る。
ここの街並みも格好良い。
基本、黒塗り。シブい。
街全体が、落ち着いた雰囲気で、肌で歴史を感じられる。
造り酒屋も格好いい。
杉玉がとても様になる街並み。
駄菓子屋も風情があるね。
街の人々は、みなさん温かかった。
ノープランの割に、素敵な宿にも恵まれ、三日目に突入。
そういえば、地方に来ているのに、食事の写真を全く撮っていないことに今更気づいた。
…気づいてしまったが、撮ってないから仕方ない。
そして、「旅に来たら朝市に行け」。
これは旅番組を制作していた時に身に付いた習慣だ。
高山陣屋前の朝市には、元気な声と新鮮な野菜が並ぶ。
地元のお婆さんやおばちゃん達との会話は、とても良いものだ。
人と触れ合う数だけ、その地域の事がよく分かる。
地元産の新鮮な野菜と、味噌をたくさん買った。
抱えきれない買い物で、1000円也。
安いし楽しい、朝市は最高である。
飛騨牛の串焼き食べながら、再び街をブラブラ。
古い家の軒先に、朝顔が垂れる。
何とも風情がある。
古い長屋の前で一枚。
僕は囲炉裏好きである。
いつか家を建てる時は、必ず囲炉裏を設置しようと思う。
みのもんたばりに、毎日そこで晩酌である。
古き良き、日本の原風景がここにある気がする。
何も考えずに友人と待ち合わせ、
まるでダーツで旅の行き先を決めるかのように雑誌を捲って
スタートしたノープランの旅。
何も決めていなかっただけに、時間とお金は余計にかかったが、
こんな贅沢な旅はなかなか出来ない。
何も考えず、その時感じるがままに動く旅も悪くはない。
日本の原風景に出逢えた気がするから…。
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