あの日青い空の下で 22


二人とも、遼を深く傷つけてしまうことをした、という認識は一致していた。
おそらくこのまま隠し通すことはできないであろうとも。
いや、隠したまま、この関係を続けるのは嫌なのだ。

では、たとえ話すとして、じゃあいったいどういう状況で、どんな言葉で打ち
明ければいいのか。
それについては、二人とも全く思い浮かばなかった。
凡人である僕は当然ながら、天才と呼ばれる彼も、事、対人関係については、
一般市民並・・・以下だから。

そして、もし、包み隠さず言えば、僕のしたことは、つまりはこういうことで。

そろそろ独りで生きるしかないと思い始めた矢先、偶然君が現れた。
僕はやっぱり独りは寂しいと思ってた。
そんな時に、君は僕に好きと言った。
だから付き合った。
君はとても優しくて、そこそこの幸福感を味わわせてもらった。
それは感謝してる。
けれど、本命が現れたからそっちに乗り換える。

最低以外の何者でもない。

もちろん、当麻とこうなってしまったことを赦してもらおうなどとは思わない、
そんな都合のいいことは望まない。
ただ、幼馴染としての思い出を汚したくないのと、どうにかしてなるべく事を
荒立てずに済ませる方法はないものかと、悪あがきしているだけで。

いや、それだって綺麗ごとだ。

結局のところは、自分の中にある、罪の意識を少しでも軽くしたい、という極
めて利己的な理由から、なんとか上手く切り抜けられないものか、と考えている
だけなのだ。

で、もし遼と別れて、その後の僕達はどうなんだろう、とも思う。

これから先、ずっと遼への後ろめたさを抱え、良心の呵責に苛まれながら、当麻と
生きてゆくことに耐えられるのだろうか。
人一人を不幸にしてもいいと、それだけの覚悟が、僕らにはあるのだろうか。
それほどに、当麻という存在は、僕にとってかけがえのないものなのだろうか・・・。

考えれば考えるほど、気分は暗く深い底へと向かって沈んでいく。

なのに、それにもかかわらず、もっと冷静に、ちゃんと考えなければいけないのだ
という考えは、片時も当麻と離れたくない気持ちに押し出されてしまう。

当麻と一緒になって、幸せになれるかどうかなんて、今は、今この瞬間は、どうでも
いいと、思っている自分が確かにいて。


何よりも、
過去も未来も忘れて、今、彼といることだけに浸りたい!


その想いが、溢れるように湧き出でて。


嗚呼、なんて、とんでもないエゴイスト。


午前5時。


行き詰り停止した思考は、本能へと変貌し、別の捌け口へと向かった。

黙りこくった僕等は、再び見つめ合い、唇を重ね、指を絡めてシーツの
海へと身を投げ出した。
 


自分の弱さと愚かさに酔い浸りながら。



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